とりあえず、学校へ行こう。

 

 

 

君のコイビト。

 

 

 

 服はまぁどうにかなりそうだ(布切れならいくらでもあるしな)。ご飯も…俺の分を少し分ければ充分だろう。

 

 それよりも何よりも問題は…

 

「やっぱトイレとか風呂だよな…」

 寝る場所なんかも問題なのだが、一番の問題はそこだ。トイレや浴槽なんて流石に作れないしな…と俺が真剣に悩んでいるというのに、渦中の人である千石はとても楽しそうだ。

「ねぇねぇ南!見て見てっ!消しゴムがこんなにでっかい!」
「お前…トイレはいいのかよ…」

 放っておくとどこに行くか分からないぐらいのはしゃぎっぷりで、千石は消しゴムの周りを跳び回っている。

「ん〜?なんか引っ込んだ!」
「引っ込んだってお前…」
「だぁ〜いじょうぶだって!そんなに心配しなくてもさ。何とかなるなる☆」

 何ともならないから困ってるんだろうが!!
 と叫びたかったが、叫んだ所でどうにもならないと考え直し頑張って堪えた。

 あぁ…胃が痛い…

 俺が真剣に悩んでいる事にようやく気付いたのか(気付くの遅すぎだろ…)、千石から提案が出た。

「あっじゃあさ!誰かの妹から人形用の家とか借りればいいじゃん?」
「それは俺も考えたけど…何て言って借りる気だ?」

「んー…『お人形さんで遊びたいからちょっとお家を貸して☆』とか?」

「………」

 確かに今の千石は人形サイズなので、人形用の家具などで充分だろう。借りれるのならとても助かる。…だが、俺がそれを頼むのはどう考えても…

「絶対変態だと思われるだろ…」

「大丈夫!俺は南が変態でも大好きだよ!!」

「フォローになってない…」

 一番良い考えだとは思う。思う…けど…恥ずかしいよな、やっぱり。でも、他に良い方法が思い浮かばないし、そうするしか無いんだろうけど。トイレなんかは明かに何日も我慢出来るものでは無いし。

「誰か妹がいるヤツって部内にいたっけ?」
「うーん…流石に兄弟の事まではあんまし知らないなー」

 いくら俺が部長だとはいえ、みんなの家族構成までは頭に入っていない。確か東方にいたような…。
 部室に行けば、名簿に書いてあると思うのだが。

「千石を部屋に一人残しておくのも不安だしな…」
「えっ南どっか行っちゃうの!?」
「いや、部室になら名簿があるよな、と思って」

「あ、じゃあ俺も行くー」

 あっさりと、さも当然だと言わんばかりに手を挙げてそう提案する千石に、俺は思わず頭を抱えた。

「そんな簡単に…どうやって行くつもりだ?」
「南の鞄に入って?」

「………」

 あぁ、なんて単純なのだろう。
 俺にもコイツみたいな考え方が出来たら、少しは地味って言われなくなるのだろうか…。おっと、話が逸れた。
 まぁ確かに、部屋に置いて行くよりは安心な気もする。放置していると何しでかすか分かんないもんな。

「鞄の中で大丈夫なのか?」

「うん、へーきへーき!」

 きっとこいつなら大丈夫なんだろうな、と少し失礼な事を考えながらも、俺は決心した。

「じゃあ…一緒に行くか」
「おー!」

 

 

 そんな訳で。俺と千石は部員名簿を求めて休み中の学校へ行く事になったのであった。

 これから…本当にどうなるんだろな…。

 

 

 

 

(南の台詞に「…」が多い回)(2007.3.12up)