さて、ひとまずこの状況をどうしようか…。

 

 

 

君のコイビト。

 

 

 

 千石リカちゃん…ではなくて、リカちゃんサイズの千石と出会ってからおよそ30分後。俺と千石は南家の俺の部屋にいた。
 あの後、驚きのあまり声が出ない俺を尻目に、千石は話を続けた。

 

 昨日までは普通のサイズだった事。
 いつも通り寝て、朝起きたら小さくなっていた事。
 なんとか自分の携帯をこじ開けて、俺にメールを送った事など。

 そして、一通り言い終わった後、千石はこう続けた。

 

「そういう訳だから、俺を南の家に連れてって☆」

 

 

 …何が『そういう訳』なのだろうか。混乱した頭のまま千石を自分の家に連れて(持って)帰ったのはいい。が、これから一体どうすればいいのだろう。

「っくしゅん」

 不意に千石がくしゃみをしてはっと気付いた。

「そういえば、服は小さくならなかったんだな」
「そうなんだって!手袋が出しっぱなしだったから助かったけどさ〜」

 俺ってやっぱラッキー?と続ける千石に、思わず顔をしかめる。本当にラッキーならば小さくなるという事にはならないだろうに。

「単に部屋が片付いて無かっただけだろ」
「南クン厳しーい」

 酷いわっ!と悲劇のヒロインを演じている千石を軽く無視しながら俺は考える。確かに手袋が服の代わりになっているのは不幸中の幸いだろう。だが、もしこれから当分このサイズのままなら、手袋だけでは…

「ちょっと待ってろ」

「?はーい」

 確かここらへんにあったはず…と引き出しの中を探って、目的の物を見つけ出した。そして傍にあった裁縫道具で簡単に処理をする。

「はい」
「?これ…」

「手袋だけじゃ寒いだろ?着物みたいに巻き付ければちょっとは暖かいだろ」

「南…」

 ちょうどこの前、家庭科の時間に余った布をもらったのは正解だった。
 何かに使えるかも、と言ったら千石には「貧乏性だね」と笑われたが。

「今はそれで我慢しろよな。そのうちちゃんとしたのを作ってやるから」
「…へへっ。ありがと、南」
「ん、どういたしまして」

 素直にお礼を言われると正直照れ臭い。「着せて着せて」とせがまれた俺は、千石に服代わりの布切れを巻き付けながら、たまにはこういうのも悪くないな、と思った。

 

「あ、南。トイレ行きたい…」

 

―とりあえず問題は山積みなのだけど。

 

 

 

 

(未知との遭遇)(2007.3.11up)