『ねぇねぇ!南!!ウチにすぐ来て!!スゴイから!!』 という、何ともまあ要領を得ないメールが千石から届いたのは朝の7時過ぎだったと思う。その時は休みなのにあいつにしては早起きだな、と感心したものだ。
―――俺が、素直に行くんじゃなかった、と後悔するのはもう少し後の話。
南君のコイビト。
千石の家は、俺の家からそう遠くは無いのですぐに着いた。確か今、おばさんたちは旅行中だっけ。
一回…二回…
何度鳴らしても出て来る気配が全く無い。二度寝でもしているのだろうか。 おいおい、不用心だな。 そう思いながらも勝手知ったる家なので、遠慮なくお邪魔することにした。もちろん挨拶は忘れずに。 寝ているとしたら部屋だよな、と2階の千石の部屋に向かった。 「千石?寝てるのか?」 きちんとノックも忘れずにそれだけ言うと、中から微かに「起きてるよー…」と声が聞こえてきた。完璧に寝ぼけてるな、と呆れつつも、部屋の中に入る。 「千石、一体何の用…」 だ、と言い終わる前に俺の目に入って来たのは、空っぽのベッドだった。 …部屋を間違えたか?でも確かにこの部屋から声が聞こえたはず…
「南ー。見て見てー」 「千石…?お前どこに…」
「ここ、ここ。南の足元」
「足元…?」
下を向いた俺の目に入って来たのは。
「…千石…?」
―リカちゃん人形サイズの、千石の姿だった。
(プロローグ的な)(2007.3.11up) |