冴ゆる

 

 

 

「う、わー…さみぃ」

風がびゅうと吹いて2人の間をすり抜けた。
それがあまりにも冷たかったので、慈郎は小さく身震いして顔をマフラーにうずめた。
12月ともなれば流石に寒い。
凍て付く風が寒さに拍車をかけているようで、道行く人の足取りも心なしか早い。
誰もが皆、少しでも早く暖かい部屋へと帰りたいのだろう。

手袋をしてくればよかった…とポケット越しにも感じる空気の冷たさに自分の今朝の判断を悔やみながら、ちらりと隣にいる後輩を見上げた。
丸くなっている自分とは対照的に、ぴしっと背筋が伸びていて寒さをちっとも感じない姿勢だったが、鼻の頭や頬がほんのりと赤い所を見ると、やはり寒いのは彼も同じなのだろう。

風が吹く度に微かに顔をしかめるその姿を何の気なしに見ていたら、バチっと目が合った。
びっくりした。

「…何ですか」

「あ、や、寒いなーと思って」

突然こちらを向くものだから驚いた慈郎は、咄嗟にそう口走った。
そんな事言われなくても分かっているに決まってる。
自分で自分にツッコミを入れていると、静かな声で「そうですね」と返ってきたのでちょっと安心した。
どうやら変には思われなかったようだ。

 

それにしても今日は本当に寒い。

そのまま何気ない会話を続けながら歩いていると、突然凍るように吹き渡る風が容赦なく攻撃を仕掛けてきた。
あまりの冷たさに顔が凍ってしまうのではないかと、慈郎は思わず頬を手で覆う。
ポケットの中で十分に温められた手はとても気持ちがよくて、ほう…と息が零れた。

「はー…あったけぇ」

手は冷えてしまうが、この際仕方ない。
頬に温かさが戻ってくるのを感じながら、慈郎は目を細めた。
よほど気持ちよさそうな表情をしていたのか、その様子を隣で見ていた日吉が小さく笑った。

「…そんなに温かいんですか?」

「うん、生き返るよー」

ほら、と慈郎は少し背伸びをしながら日吉の頬を両手で包み込んだ。
それにつられるように日吉も自然と屈む。
なるほど、確かに温かい。
元々慈郎の体温は高いほうなのだろう、触れられたところからホカホカと温まってくるのを感じた。

日吉がされるがままにぼんやりとしていたら、痛いくらいの視線を感じた。
その先を辿ってみたらすぐ側にある慈郎の瞳と目が合った。
顔が、近い。
慈郎も同じように感じたのかは分からないが、みるみる顔が赤くなってきた。
今更ながらに自分たちの体勢に気付いたのか、「あ、いや、その…」と戸惑いを隠せない様子だ。

 

日吉の頬に触れたままワタワタとし出した慈郎を見ながら、照れた顔もやはり可愛いな、と改めて実感し、日吉は慈郎にそのままゆっくりとキスをした。

 

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日吉誕生日おめでとう!お祝いしてるのか何だか分からない文ですが。
私はボディタッチが好きなんだなあ…と最近気付きました。

(2008.12.5up)