芥川さんは笑顔でいることが多い。 純粋に物事を心から楽しむその姿、その笑顔。
君は太陽
「…芥川さん、また寝てるんですか?」 「んー…」
昼休みの中庭。 またか、と思いつつ時計を確認すると、授業開始まではあと15分。
「確かにここは暖かいですけど…そろそろ起きないと次の授業に間に合いませんよ」 「んー…」 先程から起きるように促しているのだが、芥川さんは一向に起きようとしない。あーだかうーだかよく分からない言葉を発しながら、木陰でゴロゴロと転がっている。
なんでこんなにふわふわなのだろうか。
何気なく彼の髪を触ってみる。 眠っている芥川さんはとても大人しい。
でもやっぱり起きている時の方が。
「芥川さん」 「んー…」 何度呼びかけてもちっとも起きる気配が無い。そろそろ本格的に起こさなければ本当に授業に遅れてしまう。
今は俺を見ていてくれるからいい。 ひょっとしたら、今目を覚ましても、あの笑顔で俺の方を見てくれないかもしれない。 単なるいつもの居眠りなのだから、そこまで深く考える必要は無いと冷静になれば分かるのだが、その時は何故か嫌な想像が頭を支配していた。突然態度がよそよそしくなる訳が無い、と頭のどこかでは理解しているはずなのに、焦燥感に駆られて起こす手に思わず力が入ってしまった。
「…早く起きろよ…」 さみしいだろ、とボソッと呟いてしまい、慌てて口を塞いだ。幸いにも彼には聞こえていなかったようで、相変わらず幸せそうに寝息を立てている。
「芥川さん」
早く、
「起きてください」
早く起きて、
「授業始まっちゃいますよ」
俺にいつもの笑顔を見せて。
「んー……あれ、ひよしー?」
その笑顔を見ると、何だか気持ちが落ち着くから。 とても、安心できるから。
――例えるならば貴方は太陽。 俺を、暖かい陽射しで包んでくれる、そんな大切な存在。
どうか、どうかその笑顔が雲で遮られてしまう事がありませんように。
+++++ こう、日吉の心の中のモヤモヤ感を出したかったのに、私の方がモヤモヤした出来栄えになってしまった作品。 (2007.07.11up) |