放課後の廊下をゆっくりと歩く。
talking in his sleep
ジローを探して来いと言われたのは部室で着替えを終えてすぐのことだ。 今回は思ったよりも時間がかかってしまい、見つけた時には既に部活開始から30分以上経っていた。 なんであんな隙間で隠れるように寝てるんだよ…と文句を零しつつ、しかし背負っているジローを起こさないように出来るだけゆっくりと歩いていく。 何だかんだで日吉はジローに甘いのだ。それは日吉も自覚していた。
先輩たちはみんなジローさんに甘すぎるんだよ…と自分の事を棚に上げてブツブツと呟く。 「ジローさん、起きたんですか?」 立ち止まって声をかけてみるが返事はない。 「ひよし…」 ジローに小さい声で呼ばれたので「はい」と返す。 「…き」 「?」 「大好き」 「!」 予期せぬ言葉に思わずジローを落としそうになったが何とか耐える。 心臓がバクバクと煩い。
「お、俺も…」 辛うじて搾り出した声は掠れていた。
「…」
ジローからの返事が一向に来ない。
「ジローさ…って寝てる!」
振り返った先には、目を閉じてすやすやと気持ち良さそうに寝ているジローがいた。 「クソッ…!」 何に対してなのか分からない悪態をつく。
ジローが夢の中でも自分を好きでいてくれている事が嬉しいと思っている自分に気づかないフリをしながら。
---------------------- talk in one's sleep=寝言を言う (2009.8.30up) |