5.寝顔
カーテンの隙間から零れる陽射しに気付いて、ふと目が覚めた。
眠たい目を擦り、ボーっとしたまま側に置いてあった携帯を手に取る。
6時15分。
普段の自分からすると、到底起きることのできない時間だ。
まだ覚醒しきっていない頭で、今日の部活が午後からであったことを思い出した。
という事は、まだもう一眠りできる。
昨夜は眠るのが遅かったため、いつも以上に睡魔が襲いかかってきている。
また夢の中へ旅立とうと、モゾモゾと布団の中で体の向きを変えると、ふいに見慣れない髪が視界に入ってきた。
自分のように癖のあるものではなく、細くてサラサラな髪の毛。
そういえば昨日は日吉が泊まりに来たっけ、と思い至った。
隣に人がいる事を意識する内に、寝惚けていた頭が少しずつ起き始める。
考えてみれば、こうして日吉の眠っている姿を見るのは初めてだ。
いつも自分が先に寝てしまうし、起きるのは自分の方が遅い。
普段と逆の立場である事が何だかとても新鮮で、思わずまじまじと眺めてみた。
前髪で顔が多少隠れてしまっているが、綺麗な顔立ちであることは目に見えて明らかである。
意外と睫毛が長い。
そして、いつもはキリッとしていて鋭い視線を投げかける目も、閉じているとその鋭さをすっかり隠してしまい、とても幼く見えたので思わず小さく笑った。
すると日吉が身じろぎをしたので、起こしてしまったのかと体を強張らせたが、しばらくするとまたすうすうと寝息が聞こえてきてホッと胸を撫で下ろす。
本当はこのままもう少し眺めていたかったのだが、今日はこの後部活があるし、収まりかけていた睡魔が再び襲いかかってきたのもあり、また眠ることにした。
フアア…と小さくあくびをして、日吉を起こさないように気を付けながら体勢を変えた。
そのまま隣に彼の温もりを感じながらゆっくりと眠りについた。
カーテン越しに溢れる暖かい日差し、ふかふかのベッド。
そして隣には大好きな人。
(ああ、なんて―――)
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なんて幸せな朝なのだろう
(2009.4.17up)
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