4.いつの間に潜り込んできてたんだ…?
部合宿も明日で終わり。
最後の夜ということで皆やたらとテンションが高かった。
連日の練習で疲れているだろうに、一体どこからそんな元気が出てくるのだろうか…。
散々騒いで、全員が寝静まったのは日にちが変わってから随分経った後だった。
今回の合宿は大広間で全員雑魚寝をしており、当然俺もその中にいる。
しばらく眠っていたが、ふと自分の布団の中が妙に温かくなった事に気付いて目が覚めた。
何だろう…とても温かい…
「…!」
目を開けて温かさの原因が分かった途端、俺は驚きのあまり声にならない悲鳴を上げた。
この暗がりでも分かるくらい明るい髪の色は間違いない。
千石だ。
な、なぜ千石が俺の布団に?確かコイツは東方の向こう側で寝ていたはず…と戸惑いながら少し起き上がって隣の布団を見たが、東方は何事もなかったかのように眠っている。
どういうことだ。何で千石がここにいるんだ。
実際のところ、千石はトイレに起きた後、寝ぼけて俺の布団を自分の布団と勘違いして潜ってきただけなのだが、そんな事情をその時の俺が知る訳もなく。
どうしよう。
その一言が頭の中をグルグルと回っていた。
起こすべきだろうか?いや、下手に起こして周りに気付かれる訳にはいかない。
布団の中で密着している今、この状況を誰かに見られるのはかなり恥ずかしい。
どうしよう、と再びオロオロしながら、布団の中で眠る千石を見遣った。
千石は人の気も知らないで暢気に寝ている。
あ、結構コイツって睫毛が長いんだな。髪も意外とサラサラしてる…って俺は何を考えているんだ!そんな事をしている場合じゃない!
どうしよう。
何度目なのか分からないくらい自問自答を繰り返していると、千石がモゾモゾと動いたので反射的に体が硬直した。
起きる…のか?
俺に非が(おそらく)無いとはいえ、この状況を何て説明すればいいのだろうか。
そんな心配を余所に、千石は寝返りを打っただけのようでまた寝息が聞こえてきた。
その事に安堵したのもつかの間、また俺が固まる出来事が起こった。
「!!」
千石が。俺に抱き着いてきたのだ。
おおお落ち着け俺。落ち着け俺。
千石は別に深い意味があってくっついて来た訳じゃないんだ。
きっと俺を抱き枕か何かと間違えているに違いない。
うん、きっとそうだ。
自分にそう言い聞かせて落ち着こうと試みたが、心臓の音が煩くて仕方が無い。
引っ付いている千石にも聞こえるんじゃないかと心配になるほど、ドキドキしている。
マズイ。このままじゃ非常にマズイ気がする。
そう頭の中では理解していてもどうすればいいのかさっぱり思い浮かばず、オマケにこの温もりを離したくないという邪な想いも芽生えてきて。
クソッと小さく零した後、諦めてそのまま眠る事にした。
もちろんそんな状況では一睡も出来なかったのだが。
―――色々考えている暇があったら俺が千石の布団へ移動すれば早かったのに、と気付いたのは、皆が起き始める少し前になってからだった。
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冬合宿とか、そんな感じで。
一人相撲な南が好きだという事に最近気付きました。
(2009.2.9up)
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