2.寝相で蹴られても、落とされても。
ゴンッと静かな部屋に響いた音と、背中に走った鈍い痛みで南は目が覚めた。
いつもよりも少し高く感じる天井を寝ぼけたまま見上げ、しばらく経ってから自分がベッドから落ちた事に気付いた。
いてて…とフローリングにぶつけた背中を摩りながら起き上がると、ベッドの上ですやすやと気持ちよさそうに寝ているオレンジ頭が視界に入って来て、思わず苦笑いが零れる。
彼の手足はベッドいっぱいにこれでもかというぐらいに伸ばされていた。
おそらくコイツに蹴られてベッドから転げ落ちたのだろう。
そう見当をつけ、縦横無尽に飛び出ている手足をそっと布団の中に戻してやる。
ついでに自分が寝るスペースを確保する事も忘れずに。
彼―千石が南の家に押しかけて来たのは本当に突然だった。
でかい荷物を抱えながら、「家出してきた!」と爽やかに告げられた時は思わず頭が痛くなったものだ。
どうやら母親と喧嘩をしたようなのだが、南は特に深く追求する気はなかった。
ノリからして恐らく衝動的なもので、1日経てば収まると思ったからだ。
ただ、親に心配をかけるのはよくないので、ちゃんと家に電話だけはさせたが。
しかし泊まるのは構わないが、予備の布団がそんなに都合よくある訳はなく、だからと言って布団無しで眠るにはあまりにも寒すぎる季節な訳で。
悩んだ挙句、こうしてひとつのベッドで2人一緒に寝ることになったのである。
狭い事には違いないが、お互いにある程度近寄れば眠れないことは無い。
唯一の失念は、千石の寝相の悪さだった。
コイツ、こんなに寝相が悪かったか…?と部活の合宿を思い出してみたが、特にそんな印象はなかった、と思う。
そもそも、千石は南の布団から離れた位置で寝ていたので、実際の所何とも言えないが。
こんな事なら俺が壁際に行けばよかった…と後悔しても、時既に遅し。
そのまま突っ立っていても寒いだけなので、千石を起こさないように注意しながら再び布団に潜り込んだ。
千石の影響か、はたまた自分のぬくもりか、布団の中はとても温かかった。
気持ちよさそうに眠る千石を横目に、まぁたまにはこういうのもいいか、と結局ほだされる南なのであった。
―数分後にまたしても千石の蹴りによって起こされて、すぐに前言撤回するのだが。
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南国…?千石さんが一切喋ってない。
寝相が悪い千石さんもアリかな、と。
(2009.2.3up)
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