1.寝言
「またこんな所で寝て…」 溜息と共にそう呟くと、日吉は半ば呆れたように足元を見下ろした。 今日も今日とて、部活が始まって早々に跡部に呼ばれた。
文句を言いつつも、そんな自由奔放な先輩に振り回されている事がそれほど苦痛に感じていない自分もどうかと思うが。
「ジローさん、起きてください」 「んー…」 「部活の時間ですよ」
何度声をかけても全く起きない。 途方に暮れて、再び溜息が漏れる。 ようやく起きるのか?と思いその様子を見ていると、彼は幸せそうな寝顔のまま何か呟いた。
「…し」 「…?」 「ひよし…」 「!」
今、はっきりと、この先輩は俺の名前を呼んだ。 一瞬起きたのかと思ったが、そのままムニャムニャと言葉にならない音を発している所をみると、どうやら今のは寝言だったようだ。
文句を言いつつも、毎回この先輩を起こしに来る理由。
それは、単に部長命令に逆らえないだけではなく。
「クソッ…」
何だか悔しかったので、赤い顔のまま先輩のほっぺたを両手で引っ張った。
+++++++ 日吉→ジロみたいな。ジローに幸せそうな顔で名前を呼ばれて舞い上がる日吉。 (2009.2.3up) |