「あ、これ美味い」
「本当?俺も食べたい」
「ああ、一口な」
「やった!」
部活の帰り道、3人で歩いていると唐突に千石が「小腹が空いた」と喚き始めた。
確かに今日の練習はハードだったので、俺も少し腹が空いている。
南も同じだったようで、俺たちは千石の提案通りそのまま寄り道する事になった。
店では、珍しく南が新商品に手を伸ばした。
いつもなら、確実に美味しいと分かっているものを無難に頼むのに、珍しい事もあるもんだ。
どうやら千石もその新商品の味が気になっているらしく、南が口にする様子を固唾を飲んで見守っていた。
…少し大袈裟な気もするが…まあいい。
味の方はどうやら買って正解だったようで、満足気に食べる南を羨ましそうに千石が見つめる。
―そして冒頭の会話に戻る訳だが。
会話だけ聞いていると、何てことは無い。ただの日常のひとコマだ。
そう。これは日常なんだ。
「はい、あーん」
「あー…ん。あ、本当に美味しい」
「だろ?」
「じゃあお礼に俺のもあげるね。あーんして」
「あーん…うん、やっぱりこれは相変わらず美味いな」
「でしょ」
お互いに食べさせ合う2人。一見いちゃついているようだが、間違いなく無意識下での行動だ。
千石はともかく、南の性格からして、意識すると真っ赤になってしまいこんな事はできないはずだから。
これは日常なんだ。そう、日常なんだ。いつも見てるじゃないか。
常に部活で行動を共にしていると、決して珍しい光景でもない。
―だけど。
「(な、なんで俺が…照れてるんだろう)」
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この後2人は「見てるこっちが恥ずかしいんだよ!」って東方に怒られればいいと思う。
(2009.11.25up)
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