ここ最近、千石の機嫌がすこぶる悪い。 原因は多分、俺…なんだと思う。
JEALOUSY
「…まだ機嫌が悪いみたいだな」 少し離れた場所で錦織と話している千石を見やる。 謝ろうにも理由が分からない以上謝ることすらできない。
「何か身に覚えは無いのか?」 小声で東方と話していると、向こうにいた千石と目が合った。 「…あれは相当怒ってるな」 弱々しく呟く南を東方は複雑な表情のまま眺めることしかできない。 この状況になってまもなく東方は仲裁に入ろうとした。 東方としてもダブルスの相方の役に立ちたいのだが、どうにも八方塞がりすぎて途方に暮れていた。
気落ちして小さくなっている南を気の毒そうに見つめていると、不意に南が何かを決意したように立ち上がった。 「…やっぱり、直接聞いてくる」 このままじゃ埒が明かない、と拳を握り締めてそう言った南は、おっかなびっくり千石の元へと歩き出した。
「千石!」 冷たい声に一瞬怯みそうになったが、南は何とか気持ちを持ち直して千石を見据える。 「あの、さ…俺なんかした?」 気づかない内に何かしたなら謝るから、と続けると千石からは「…別に」と返ってきた。 「別にって…何も無いならなんでそんなに怒ってるんだよ」 南が思わず声を荒げると、2人の様子を窺っていた東方が慌てて仲裁に入る。 「まあ南も落ち着け。とりあえずお互いの意見を聞きながら…」 「ほら、また…!」 怒鳴り合ってはまともに話も出来ないだろう。
「いつもいつも東方と仲良くしちゃってさ!どうせ南は俺よりも東方の方がいいんだろ!」
フンッとそっぽを向いた千石に、南と東方は固まった。 それってつまり… しばらく2人して固まっていたが、立ち直るのが早かった東方はため息をつきながらやれやれ…と肩を竦めた。
「つまり千石は、南と俺の仲の良さに嫉妬した、と」 直球で東方がそう指摘すると、千石の顔が一瞬で赤くなった。
「え、あ、その、千石」 「…もん」 「え?」 「いいもん!俺も浮気してやるー!」 「ええ!?」
赤い顔のまま、捨て台詞のように吐き捨てて千石が走り去った。 しかし、とりあえず原因は分かった。
「錦織ぃ、一緒にストレッチしよー」 「あ、うん、別にいいけど…(何か南が悲しそうにこっちを見てる…!)」
---------------------- JEALOUSY=やきもちを妬く (2009.8.31up) |