例えばテニスをしている時の真剣な顔とか、お笑いライブの時の楽しそうな顔とか、ふとした時に見せる色っぽい顔とか照れた時の真っ赤な顔とか普段のアホっぽい顔とか。

ユウジさんならどんな表情をしてても愛おしいとか思ってるあたり、自分は重症だと思った。

 

 

 

PM11:59

 

 

 

「せや、この前言うとったCDやけど、買うたんで今度貸しますわ」
『ホンマに?どうやった?』
「結構ええ感じでしたよ」
『ほー。そら楽しみや』

寝る前にパソコンを弄っていたら、ユウジさんから電話がかかってきた。
彼専用の着信音に反応してすぐさま電話に出てしまい、少し後悔した。
まるで心待ちにしていたようではないか。
まあそんな事はユウジさんの声を聞いた時点ですぐに吹っ飛んだが。
実際期待しとったんは事実やし。

ユウジさんとの電話ではいつも会話が尽きない。
テニスのこと、お笑いのこと、音楽のこと、夏休みのこと。自分がいつもよりも饒舌な気がするのは気のせいではないだろう。
彼と話すのはとても楽しい。

喋りながら壁にかかっている時計を見やる。
まもなく長針と短針が重なろうとしていた。あと5秒、4…3…2…1

 

『せや、誕生日おめでとう』

 

いつの間にか日にちが変わっとったわ、とユウジさんはさり気なさを装っているが、日付が変わってすぐに祝っている時点でバレバレだ。
元々祝うつもりで電話をかけてきたのだろうに。
まあそんな素直じゃないところも可愛いので特に指摘はしないが。

「…おおきに。最初に祝ってくれはったんが先輩で嬉しい」

素直にお礼を言うと、しばらくの沈黙のあとに「…おう、」と小さな声が聞こえてきた。
電話の向こうではきっと照れているのだろう。
携帯を片手に顔を赤くさせている姿を想像すると、自然と口元が緩んできた。
電話越しでよかった、と思った。今の自分はきっとだらしない顔になっているから。

「ユウジさん」
『な、何や』
「好き」

普段はなかなか口に出せないがユウジさんがあまりにも可愛くて思わずそう告げると、さっきよりも長い沈黙の後に「…俺も」とだけ返ってきた。
自分の顔に熱が集まってくるのが分かった。
アカン、この人ホンマに可愛すぎる。

そんなやり取りをしている内に、声だけでは物足りなくなってきた。
夕方まで一緒にいたのに、随分昔の事のように感じる。

「ユウジさん、会いたい」

会って顔が見たい。直接目を見て「好き」と告げたい。抱きしめて、キス、したい。

こんな夜中に無理だと分かっている。夏休みとは言え明日も部活があるのだ。
すっかり黙ってしまったユウジさんが困っているのだと思い、慌てて前言を撤回する。

「スンマセン、冗談っすわ。明日も早いですし―」

『…ろや』
「え?」

『絶対起きてろや!』

突然叫んだと思ったらこちらの返事を待たずに電話が切れてしまった。
呆然と携帯を見つつ、ユウジさんの言葉を反芻してみる。
彼は寝るなと言った。何故?それは俺が会いたいと言ったから―。

(え、嘘、ホンマに、)

まさか本当に会いに来てくれるとは思ってもいなかった。
口元を手で覆いながら喜びを噛み締める。
嬉しい嬉しい嬉しい。

ふと、自分の今の状態を思い出した。
風呂から出てそのままだったので髪がボサボサだ。
だからと言ってワックスを使うのはさすがに張り切りすぎだと思い、手ぐしで何とか髪を整える。
服装もTシャツにジャージだ。着替えた方がいいのだろうか。
しかし気合を入れすぎだと思われるのは…。

そわそわしながら部屋の中を行ったり来たりする。
その間も頭の中はユウジさんの事でいっぱいだ。

彼がやってきたらまず何と言おうか。

(どないしよう、)

何だか無茶苦茶緊張する。
別に普段から一緒にいるというのに、すごく特別な事のように思えた。
早く来ないかな、と時計を見てみるが、まだ5分しか経っていなかった。

 

 

(ハァ、俺ホンマにユウジさんの事―)

 

 

 

めっちゃ、好き。

 

 

(遅れたけど財前HAPPY BIRTHDAY!!)(2009.7.25)