ちょっとコンビニに行って来ると言ってユウジさんが家を出てから10分。 それから更に10分後。 「…猫?」 俺が呟くと、その黒猫は小さくにゃあと鳴いた。
雨はどうやら夕立だったようで、ユウジさんが帰ってきてから間もなくあっさりと止んだ。 「コイツ、雨の中一人ぼっちやってん」 猫の方を向いたままポツリポツリとユウジさんが話す。 「で、名前は何にしますか」 「え、」 俺が元いた所に返して来いとでも言うと思ったのだろうか(それはそれでちょっとショックだ)、恐る恐る聞き返してきたユウジさんは、次の瞬間には満面の笑みになっていた。 アカン、今のめっちゃかわええ。 そんな俺の反応に気付かなかったユウジさんは、よかったなあ、今日からここがお前の家やで!と嬉しそうに猫を抱き上げた。 「ちょ、やめ、くすぐったいやんけ」 文句を言いながらもユウジさんは嬉しそうに笑っている。 そんな姿を見ていると、だんだん猫が羨ましく思えてきた。 「ズルイっすわ、猫ばっかり」 ポツリと零したらユウジさんが聞き返してきた。 「俺もしたいんやけど」 俺の言わんとすることが分からずにユウジさんはしばらくキョトンとしていたが、俺と猫とを交互に見た後、理解したのか顔を真っ赤に染めた。 「嫌?」 モゴモゴと話すその口から拒否の言葉が出なかった事にホッとしつつ、猫を抱く手を胸の辺りまで下ろさせる。 アカン、この人ホンマかわええ。
更に顔を近づけると、お互いの唇が触れ合うタイミングを図ったかのように、俺たちに挟まれる形になっていた猫がにゃあと鳴いた。
---------------------- ニャンコに嫉妬する財前って可愛いですよね。 都さんちの間取りをお借りしました。 (2009.7.5の日記より移動) |