どうしよう、何をプレゼントすればいいのか、そればかり考えている間にとうとう当日になってしまった。
結局何も買えなかった。学校帰りに何度も鳳や樺地を連れ出してあちこち回ったのだが決まらなかった。
どうしよう。もう当日になってしまったのだからどうにもならない事はよく分かっているが。

「日吉…?どしたの?」
「え…」
「何か元気ないみたいだけど」

一人物思いに耽っていたので、ジローが待ち合わせ場所にやってきた事に気付かなかった。すみません、ちょっとボーっとしてましたと謝ると、日吉にしては珍しCね、とジローが笑う。
そんな他愛も無い会話をしている間も、日吉の中にはどうしようという言葉がグルグルグルグル回っていた。

 

「ホントにどうしたの?具合でも悪い…?」
「あ、いえ、すみません…」

心配そうに日吉の顔をジローは覗き込んだ。日吉は今日ジローに会ってから『すみません』しか言ってない事に気付き、大丈夫ですよ、と出来るだけ元気に返した。

「あ、そだ」
「?」
「忘れない内に渡しちゃうね」

はいっ!とジローがポケットから小さな包みを出して日吉に差し出した。日吉が受け取ったのを確認すると、ねね、開けてみて!と嬉しそうな声が掛けられる。
そっと開けてみると、中に入っていたのはストラップだった。

「それね、俺とお揃いなんだよ!」

ほら!とジローが自分の携帯を掲げてみせると、確かに同じシンプルなストラップが付いていた。

「ありがとうございます」
「どういたしまして!」

ニコニコしているジローとは対照的に、日吉はとても気まずそうな顔で少し俯いていた。
ジローさんはしっかりとプレゼントを用意してきてくれたのに。自分は何をやっていたのだろうか。しかし何度悔やんでも、もう遅い。
謝るなら今しかない。そう決意し、ジローに改めて向き直る。

「すみません」
「ん?」
「プレゼント…用意できませんでした…」

申し訳なさでいっぱいになっている日吉を見て、ジローは微笑んだ。

  

「うん、知ってるよ」

「え…」
「おーとりたちが教えてくれた」

ここに来るちょっと前、ジローに届いたのは一通のメールで、その中には日吉が一生懸命悩んでプレゼントを選ぼうとしていた事と、悩みすぎて決める事が出来なかったといった内容が書かれていた。

「別に物じゃなくても充分だよ」

言葉を選ぶようにジローがゆっくりと話す。

「俺のためにいっぱい悩んでくれたって事が一番嬉Cよ」

だから気にしなくてもEからね、と少し気恥ずかしそうに笑うジローを見て、あぁ、やっぱり何でもいいから買っておけばよかった、と日吉は後悔した。
そんな日吉の気持ちを察したジローは何か言おうとして、ふと閃いた。

「あ!じゃあ俺のお願いを何でもひとつだけ聞くとか?」
「?」
「それが俺へのプレゼントって事で!」
「それだけでいいんですか…?」

日吉に戸惑い気味に聞き返されて、ジローはニヤリと返した。
何してもらおっかなーと、その顔は悪戯をする前の子供のようだった。

「じゃあ…」
「はい」

しばらく考えた後、改まった感じでオホン、と咳払いするジローの言葉の続きを、日吉は神妙な面持ちで待った。
ジローは控えめな笑顔で、静かに言った。

  

「これからも、ずっと、一緒にいて」

  

一体どんなお願いが来るのかとドキドキしていた日吉は、ジローが遠慮がちに発した言葉に目を見開いた。
そんな日吉の様子を、ジローは不安そうに見守っている。

「無理…かな」

ずっと、とかそんなの言われても困るよね、と自分に言い聞かせるようにジローはへへっと笑った。その顔がとても寂しそうなのに気付いて、日吉は考えるよりも先に行動に出した。

「ひよ…」
「分かりました」

ギュっとジローを抱きしめながら、日吉が続ける。

「ずっと、ジローさんの側にいますよ」
「…」

日吉はそう言うと、ジローをさっきよりも強く抱きしめた。決して離さないとでも言いたいかのように。
始めは戸惑っていたジローもそっと日吉の背中に手を回す。何も言わず、静かに。

  

そんな心配をしなくても、ジローさんが嫌になっても絶対離さない、と腕の中の愛しい存在をしっかりと確かめながら心に誓った日吉なのであった。

  

 

+++++

ラスト。何だかまとまりの無い話ですな!(自分で言うな)

まぁ日吉はジローの事を、ジローが思っている以上に大好きなんですよという事が伝わればそれだけで充分です。ここまで延ばしたくせに大した内容をかけなくてすみません…

遅すぎるメリークリスマスを貴女に。

(2008.2.14up)(バレンタイン…)