「ごめん、遅れた!」 よかった、と胸を撫で下ろすジローに、日吉は少しだけ嘘を付いた。
少しその場で話をしながら日吉が何気なくジローの方を見たら、バチッと目が合ったので思わず2人で笑い合う。 「ん、ありがと」 こんなに寒いのならもっとあったかい格好してくればよかった、と苦笑するジローの姿は、それほど寒そうでは無かったが、首元と手だけは全く防寒していなかった。 「はい」 本当はもう少し時間を置いてから渡そうと思ったが、今日は予想以上に冷え込んでいたので話が変わった。 「あったかいC〜。ありがとね!」 一緒にいる中で、ジローが手袋を付けている姿を見た事が無かった日吉は、持っていないだろうと判断してプレゼントする事に決めた。予想通りだったらしく、ちょうど欲しかったんだ、と日吉に見せるように手を掲げるジローを見て、日吉は内心かなり安堵した。
そんな日吉の心を知ってか知らずか、ジローは頬を紅潮させながらじっと日吉を見つめる。その視線に気付いた日吉は不思議に思い、首を傾げた。 「?」 俺からのプレゼントなんだけどね、と持っていた紙袋から綺麗にラッピングされた包みを取り出した。日吉はそれを受け取り、ありがとうございます、と照れ臭そうに返した。 「日吉は手袋持ってた気がしたけど」 何となくプレゼントは手袋が良いって気がしたんだよねーと頭を掻きながら説明する。
しばらくしてから、そうだ!とジローがなにやら閃いたように手をポンと叩いた。その行動は少し古い気がするが、日吉は特に気にする事も無くジローに続きを促した。 名案でも思いついたのか、ジローはウキウキしながら自分のはめている手袋を片方外す。その行動に疑問を抱く日吉に、はい、とその外した手袋を渡した。 「日吉はこっちね」 差し出された手袋を反射的に受け取った日吉は、未だに疑問符が頭から離れないままジローの行動を見守る。
「これでお揃いだね」
ほら、と両手を日吉の前に持っていく。右手にはオレンジ色で、左手に青。そのちぐはぐな組み合わせが、何だかとても大切なものであるかのように日吉は感じた。 「お揃い、ですね」 顔を綻ばせながら日吉も両手に手袋をはめる。はい、と同じように手を掲げると、ジローもくしゃっと破顔した。
そろそろ食事でも食べに行きますか、と日吉が提案すると、どちらともなく手を繋いで歩き出した。
次に学校に行く時には、両手で色が違う手袋の事をみんなに盛大に突っ込まれるだろうけど、それはまだしばらく先のお話。
+++++ 1つめ。 (2007.12.26up) |